はじめに
今回はお祭りやイベントでよく目にする山車(だし)について書いていきます。「神輿」や「だんじり」との違いから、パーツ毎の見どころ、車輪製作の難しさなどをまとめました。当社でも山車(だし)の車輪製作を承っていますので、詳しくはこちらの記事もご一読ください。
目次
山車(だし)とは?神輿やだんじりとの違いについて
皆さんはお祭りなどで、山車(だし)を見たことはありますか?「木でできている」「大きい」「人が担いだり、引いたりして動く」このようなイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。
ここでは、山車(だし)とはいったい何か?また、神輿やだんじりとの違いについて解説していきます。
山車とは、「だし」または「さんしゃ」とも呼ばれ、祭りや行事などで使用される装飾された車両のことです。その起源は古代の祭りや儀式までさかのぼります。一般的には宗教的な行事や季節の祝祭、収穫祭などで使用され、地域や文化によって異なる形状やスタイルがあります。
日本の山車は、主に神社や寺院の祭りで見られ、神聖な存在を運ぶ役割を担います。日本の山車の起源は奈良時代や平安時代で、神聖な山を模したものとされていて、神の加護を地域にもたらし、豊かな収穫や平和を祈願する儀式の一環として使用されてきました。
江戸時代になると、山車は豪華絢爛なデザインが施され、祭りの見どころとして発展していきました。現代だと各地の山車祭りは、地元住民や観光客が楽しむ観光イベントとして知られています。
日本最大の山車は、石川県七尾市で毎月5月に開かれる「青柏祭(せいはくさい)」です。高さ12メートル、幅約13メートル、重さ20トン、車輪直径は20メートルとなります。
では次に、「山車(だし)」、「神輿(みこし)」、「だんじり」はどのように違うのでしょうか。
まず最初に挙げられる違う点は「構造と形状」です。
山車は通常、四輪の台車の上に建築物や舞台が載っており、車輪を使って移動します。また、山車は高い構造で屋根や彫刻などの装飾が施されていることが一般的です。
神輿(みこし)の場合、四角い箱状の構造で、神社を模した小さな神社のような形状をしています。神輿は担ぎ手によって持ち上げられ、肩に載せて担ぎ歩かれます。
また、だんじりは車輪がついた屋根のある台車のような構造をしています。だんじりは複数の車輪を備え、それを引っ張るための綱がついています。
また、用途や役割もそれぞれ違います。山車が芸能や舞台、祭りで地元の伝統や文化を披露するために使われるのに対し、神輿は神聖な存在を拝むために使用され、神社の祭りや伝統的な行事で見られます。だんじりも祭りや行事で使用されますが、芸能や舞台で使用されることは一般的ではありません。
山車をパーツ毎に見てみる
山車は見る角度によって見どころが異なります。どの角度から見ても、隅から隅まで楽しむことができるのも山車の魅力です。ここでは各パーツ毎に特徴を紹介していきます。
■お囃子(おはやし)
山車の中で一番目立つ部分は、なんと言ってもお囃子が良く見える正面です。太鼓や笛、摺鉦(すりがね)が奏でる軽快なリズムがお祭りを盛り上げ、山車によっては踊りや掛け声も一緒に見ることができます。
■提灯(ちょうちん)
提灯の色どりや装飾も山車の魅力のひとつです。山車は、町や団体ごとに提灯での装飾を競い合っているのですが、町名などは通常一番大きい提灯に記載されているので、どの町の山車か一目で見分けることができます。
■彫り物や飾り物
山車は神様をおもてなしする役割がありますので、非常に細やかで豪華な装飾彫刻が施されています。装飾彫刻は、動物や植物などが山車の大きさを生かして大胆に彫刻され、中には漆塗りで赤色のアクセントをつけるなど、技の素晴らしさと彫刻の躍動感に圧倒されます。
■刺繍
山車の中には、豪華な刺繍が施された幕をまとっているものもあります。幕には山車全体を覆う大幕と、上部のみを飾る水引幕があります。刺繍の題材には、龍や鳳凰といった霊獣から、鶴、鷹、虎、鯉、鮎、イセエビなどがあります。金や赤など、色とりどりの糸で刺繍された幕は、刺繍とは思えないほど立体的で、生き物の躍動感を感じることができます。
■車輪
車輪も山車を見る上でかかせないポイントです。山車の車輪は通常、木彫りや金属製の彫刻や装飾が施されています。これらの彫刻は地元の職人によって手作りされ、祭りのテーマや地域の伝統を表現しています。彫刻には動植物、神話のキャラクター、歴史的なシーンなどが描かれることがあります。
山車を見る際に、車輪に注目して見ることはあまりないかもしれません。ですが、車輪は山車のパーツの中でも重要な役割を担っています。次にその役割について詳しく解説していきます。
車輪(ゴマ)の役割
山車の車輪は、山車が移動し、祭りや行事で参加者と観客に向けて見せ場を演出するために重要な役割を果たしています。単なる移動手段だけではなく、他にも様々な役割を担っています。
■移動手段
先程でも説明しましたが、車輪は山車を移動させるための基本的な手段です。特に大型で豪華な山車は、車輪を回転させることで移動し、祭りのパレードや行進に参加します。これによって、山車は祭りの中で目を引く存在となります。
■見せ場の演出
車輪の動きは、山車が進むにつれて変わり、視覚的な演出を生みます。彫刻や装飾が施された車輪が回転する光景は、観客にとって祭りの見どころの一つとなり、その動きの役割を担っているのが車輪です。
■歴史や文化の伝達
車輪の彫刻やデザインには、地域の伝統が表現されることがあり、これにより、山車が所属する地域の歴史や文化が物語られ、地元の誇りを象徴します。
山車の重要なパーツである「車輪」。では、車輪を作る上でどのような技術や技能が必要なのでしょうか。車輪の制作について解説していきます。
車輪制作で活かされる匠の技術
日本の祭りや行事において欠かせない存在である「山車」。その中でも、山車の車輪制作は様々な技術と技能が必要な難しい作業です。
まず、木材の選定と加工が重要です。山車の車輪は耐久性が求められるため、適切な木材の選択と正確な加工が必須となり、彫刻や装飾において高度な技術が要求されます。そして、車輪のバランスと動作は山車が行事や祭りで正確に移動するために欠かせません。大型の山車では特にその難しさが増し、緻密な計算と加工技術が求められます。
また、車輪は重量のある山車を支えながら移動するので、道路との摩擦ですり減り、歪みが発生します。ヒビが入ることもありますので、定期的なメンテナンスは欠かせません。ただ、樹種や経年変化によって対処も変わりますので、正しいメンテナンスを行うにも、木への正しい知識や技術が必要となるのです
ヤトミ製材の車輪制作
弊社ヤトミ製材でも、山車の車輪制作を行っております。
「伝統を継承する人々の手助けをしたい」という社長の思いから、できるだけ費用を抑えて短納期に車輪が納品できるよう力を入れております。
また、製材会社ということもあり無垢の木材から車輪を製作することが可能です。詳しくは、山車の車輪製作について弊社代表「加藤徳次郎」にインタビューした、こちらの記事をご一読ください。
直近だと、愛知県半田市にある旭車の車輪を製作し、令和4年開催の半田祭りで披露することができました。
愛知の山車が揃う「はんだ山車まつり」
昭和54年以来、9回の開催と45年の歴史があります。今では、5年に一度、市内10地区の山車が集結する大規模な祭りで、豪奢な彫刻や幕などに装飾された総数31輌もの山車が、一堂に会します。
参考文献
執筆者紹介
加藤 徳次郎
株式会社ヤトミ製材 代表取締役社長
1965年生まれ愛知県出身。その後、シンガポール・マレーシア・アメリカの製材工場勤務を経て、1989年(24歳)ヤトミ製材に入社。47歳の時、代表取締役に就任。木材業界35年以上の知識と経験で、御神木の保存活動や山車(だし)の車輪(ゴマ)製作など、製材のみに留まらず多岐にわたって活動している。趣味はスキーとカメラ。
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